≪功徳‐3≫
つつき…
夏休みが来て、子供たちは家で過ごし、私の方は会社で忙しくしていたので、子供たちをどこにも連れて行けないでいました。会社のある女性に頼んで、家で子供たちの面倒と宿題などを見てもらっていました。
ある日会社で会議があったのですが、外側の応接室からかすかにテレビのニュースが流れているのが聞こえました。台北市の仁愛路に大火事があり、すごい勢いの火だと言っていました。
会議は私が受け持っていたので、詳しいことは聞こえませんでした、でも仁愛路には我が家があるので、4時半に会議が終わるとすぐさま同僚にお願いして、車で火災の現場に連れて行ってもらいました。
次の瞬間、運転していた同僚が私を起こしてくれました。多分疲れが溜まっていたのでしょう、車に揺られているうちに、私は眠ってしまったのでした。
目を開けたとたん、飛び込んできた光景を見て、「わっ!」と叫んでしまいました。「これは私の家じゃない。こんなひどい焼け方をして!」私は火の勢いが収まったかどうかなど構わず、三階の我が家まで駆け上ろうとしました。でもすぐに消防員と警察官につかまってしまいました!「私の子供たちは?私の子供たちは?」声を張り上げて泣き、私は上へ駆け上ろうともがきました。
現場は高温だったので、消防員はホースで水を放出して小さな防火通路を作ってくれ、その場の三人の人を呼んで私を三階まで護送してくれました。我が家の玄関の鉄の扉は、火事の高温で熱くて触れません。しかも膨張してしまって、開けるに開けられませんでした。消防員は大きな斧を振り上げて、鉄扉をたたき破ってけり倒してくれました。ようやく私たちはこわごわと身を摺り寄せるように、すばやく中に入りました。
家の中はどこも高温で濃い煙に包まれていました。熱いし、息ができないし、何も見えません。泣きながら、私は声を張り上げました。子供たちの名前を、一人ずつ呼びました。でも四人の子供たちの声は全く聞こえませんでした!
ここにきて、もう私は恐怖で両足が立てませんでした。気を失いそうになり、頭がおかしくなりそうでした。もう、本当に駄目だと思いました!
突然、消防員が人の体を踏んでしまったようだ、と言いました。なんと、うちの四人の子供たちはお互いに抱き合って1つになって、買って来たばかりの古本の山に倒れこんでいました。会社の女性は、もう一つの古本の山にやはり倒れていました。
消防員と警察と私は、急いで子供たちと会社の女性をしょって階下に降りて、病院に急送しました。幸いにも、窒息の状態はそんなに重くはありませんでした。緊急治療を行って、その日の晩には病院で徐々に意識を取り戻しました。
消防員が言うには、床がこんなにも焼けて高温になっていたので、もしも窒息して直接床に倒れてでもいたら、きっと焼け焦げて一人も生存できなかっただろうとのことでした!そして、消防員が最後に言ったのが、「あなた方ご一家はきっと道徳が良いのですね」でした。
この大火事が収まってから、我が家の隣近所の家々は全焼し、だれ一人生き残らなかったと聞きます。私たちが住むこの棟も、一階から二階、そして最上階まで全焼でしたが、我が家のある三階だけはなんと予想外に火事の被害から免れました。
消防員は「三階のあなたたちの家の外は煙が立ちこめ、消火水をかけようとしましたが、まるで家が消えたように見えませんでしたので、あなたたちの家の中は一滴も濡れることなく無事でした。」と言いました。
隣近所が火の海に覆われ、私たちの家の壁が高温になり本棚の鋼鉄が熱で曲がってしまいました。何万本の本も煙をあげはじめましたが、一冊も燃えませんでした。
消防員が言いました。「本当に奇跡的だ!こんなことがあるなんて。」
何万冊とある本がもし全部焼けてしまっていたら、うちの四人の子供たちは生きのこれたでしょうか?我が家は本だらけですが、それはとても燃えやすいはずなのですが。
続く…